救われないもの

神は救う命と救わない命を選別する 平らな地面からこぼれ落ちたその命は 誰の目にも映らず 手を差し伸べるものもなく どこまでもどこまでも堕ちてゆく 堕ちてゆくいのちは 眼を剥き 声の限りで叫びながら 救いを求め 神に縋りひとに縋る 宇宙の底の引力に引…

ヒトダスケ

君はほんとうにやさしいね いつもいつもぼくにあたたかい言葉をかけてくれて でもね その眼に浮かぶ嘲りの色は やっぱりぼくを傷つけるんだ あなたのそのナイフのような慈悲の心に いつもぼくは切り刻まれているよ 君はいいことをしていると思い 気持ちいい…

ぼくという種子

ぼくというなにかの種子がありました 冬の終わりでしょうか 誰かがぼくを土に蒔きました 同じく 多くの種子が土に蒔かれました 春が来ました 多くの仲間が芽を出しました ぼくは土の下で硬い種子でした 夏が来ました 花を咲かせる仲間たち ぼくは硬い種子の…

あの歌

もし明日、天国へ行くのなら ラジカセを持って行こう 中学生の時に買った サンヨーのラジカセを 買った時に 店員さんが外し忘れた 店頭デモンストレーション用の 村下孝蔵のカセットを入れて あの頃、僕が心を殺される前 毎日カセットの歌に合わせて 歌った…

僕がまだ人間だったころ

僕がまだ人間だったころ 朝目覚めると明るい陽を浴びて 朝ごはんの匂いが楽しみだった 僕がまだ人間だったころ おかあさんがいて おとうさんがいて おねえちゃんがいて おばあちゃんがいて 僕がまだ人間だったころ 庭に花が咲いていて 赤い花、青い花、黄色…

ただ ここにある

永遠なものなど この世にない 身体は老いる 髪は抜ける 肌には皺が 思考は鈍り 記憶は薄れ 愛も忘れる 地球の終わり 宇宙の終わり 時間の終わり すべていつかはやってくる 魂の断末魔 すべての思いは無間の闇に押しつぶされて 何もかも闇の中へ葬り去られて…

すれ違い

いつもいつも 君は言葉を尽くして 僕を励ましてくれるね でもね 君の言葉は 僕の耳の穴を通るには大きすぎるんだ 僕も 耳の穴を精一杯広げて 君の言葉を聞くのだけれど 君の言葉は大きすぎて 僕の耳の穴を通らないんだよ 君が経てきた広い大きな人生と 僕の…

ああ、それを言われると・・・

おもえば 僕はこんなに長い間 一体なにをしていたのだろう しっかり大地を足で踏みしめてこなかった 時のながれを指をくわえて眺めていただけだった 若き日に 病を得たその日から 時をワープして 時空をショートカットしてズルして生きてきた それゆえに 姿…

母へ

そして 今日の夕暮れは 雨とともに灰色の空が暗転してゆく あなたの人生はもう残り少なく 何色で暮れてゆくのだろう 思えば 僕はずっとあなたに色を決められてきたように思う これは甘えか 被害妄想か しかし僕には自分の色を決める 術がなかった そして気が…

言葉もない

どんなに自分に嫌悪を抱こうとも どんなに自分が許せなくとも どんなに自分に背を向けようとも 僕は自分を生きてゆく 誰がなんと言おうとも かたわの僕を 人はあれこれ 誹謗する 好き勝手に こき下ろす まあ、言わせておこう 人間はくだらない 人生はくだら…

かなしみ自慢

「わたしはひとより多くかなしみを知っている」 こんなことを言う人がいる 実際、その人は多くのかなしみを経験してきた かもしれない しかし、その経験の裏で知った 多くのよろこびについて、語ることはない なぜ よろこびよりも かなしみを見せびらかすの…

陽は沈み、そしてまた朝は来る

毎日毎日 来る日も来る日も 朝起きて かったるくて 「今日も頑張んなきゃ」 と自分を奮い立たせ 日々の生活の中で 人生がうまくいかないことに 遣る瀬無さを感じて 「こんな人生、やめちまいたい」 と思いながらも それでも生きることを諦められずに また明…

夢の正体

僕は、今日もまた 永遠に形になることのない夢を見る 夢は 形になれば、夢とは言わない 形にならないからこそ 夢なのだ 今日も 今も 夢という 逃げ水を追いかけて 生きるのがまた 虚しくなる あなたの心に 僕はいない 誰の心にも 僕は存在しない あなたは僕…

風の声 ひとの心

強い風が 窓の隙間から唸り声を上げる 子供の頃 夜中に木々の間を通り抜ける 強い風の声が怖くて眠れなかった 今も 風の声を聞くたびに あの頃を思い出す でも 今、一番怖いのは 世のひとの心 かもしれない いつからか 風より ひとの心が怖くなった 嵐の風が…

よろこび

ぼくは かなしみを撒き散らして きみを 大切な人たちを 繋ぎとめようとしていた そのかなしみに共鳴して 寄り添う人もいるかもしれないが いつか離れてゆく そして あなたをかなしませる もう かなしみより よろこびで きみや 大切な人たちと 寄り添いたい …

誕生日の午後

なんて遣る瀬無い日だ 祝ってくれる人も そばに寄り添う人もなく ただ、ひとつ歳を取った こんなにさみしいものなのか 誕生日というものは 歳を重ねるごとに 人間は寂しくなるのだな 今日も静かに陽は暮れて ぼくも静かにたそがれる 生きるって さみしいね

コスモス

きっと この宇宙に無駄なものはない そう ぼくがそう感じればいいだけ 空に眼をやると 青い虚空が落ちてきそうで そんな空を まあるい地面が支えていて あるいは 青い虚空が地面を支えていて 支え合っている この宇宙 よろこび かなしみ 憎しみ 愛 いろんな…

吸って 吐いて

息を吸う 僕の肺は、宇宙で満たされ 息を吐き 僕は宇宙に宇宙を返す この宇宙を満たしてるのは よろこび かなしみ 憎しみ 怒り それとも 愛ですか よろこびや 愛が この宇宙にもっと あればいいのに いや ぼくが 感じないだけなのだろう この宇宙を支えてい…

なんの実りもない くだらない人生だった 今はただ 生きるのが 恥ずかしい、恥ずかしい 恥ずかしい 努力なんて 誰でもすること ぼくは その努力だって 足りなかったよな ぼくは 人にもまして 愚かだった、愚かだった 愚かだった 今はただ 生きるのが 恥ずかし…

安価ないのち

ぼくは 安い人間 天にも 地にも 人にも 見はなされ かたわの心と 欠損した魂と 世の嘲りを受け ただ屈辱に生き なにが面白い? こんなジンセイ なにが面白い?

ただ 生きて、

疲れたな こんなにむなしく なんの甲斐もなく なんで生きているのだろう 生きているのではなく 「生かされて」いるのだろうか そこに自分の意思はなく ただ「生きよ」と尻を叩かれている 死んだらどんなに楽だろう そこにはなんの思い煩いもなく ただ、虚空…

果てない宇宙

ぼくは 生きることも 死ぬことも できない ただ 「生かされて」いる 生きる自由も 死ぬ自由も ぼくにはないのだ その 大いなるものの意思で 命は与えられ そして かなしみを知る これでもか、これでもか、 これでもか、と かなしみはぼくをを襲う ぼくは か…

この宇宙の中で

流れてゆく すべて流れてゆく 流れていないのは この宇宙の中でぼくだけ いのちは流れ ときは流れ 過去から未来へ流れているのに かたわのぼくだけおいてけぼり もうどのくらい ここにとどまっているのだろう かつて親しかったひとたちも 宇宙の彼方へ遥か遠…

ひとつずつ

ひとつうれしいことがあれば ひとつだけよろこんで ひとつかなしいことがあれば ひとつだけかなしんで うれしいこと かなしいこと ひとつずつ ひとつのよろこびで 世界を白く染めたり ひとつのかなしみで 世界を闇に包んだり どうかしないでください ひとつ…

おもいこみ

「誰もあなたのことなど そんなに嫌ってません!」 そうなんです 少しは嫌っている人も いるかもしれません しかし みんながあなたを 嫌ってはいません 本当です もう そんな思い込みやめませんか だいじょうぶ だいじょうぶ だよ

慈しみ

ぼくは ずいぶん長いこと 自分を虐めてきたなぁ もう そんなのやめた 「あいつが悪い」 「こいつが悪い」 「自分は惨めだ」 これ全部 自分虐めです 自分を大事にすることは 他者を大事にすることだ もっともっと 大事にしよう 自分も 他者も

まかせとき

みんな逃げてゆく 僕の側から逃げてゆく おいらはまるでブラックホール みんな逃げろ〜 「逃げろ逃げろ〜 あいつは俺たちとは違うんだ」 おいらは世界を引き受けている 世界中の劣等感を引き受けている でもね この世に無駄なものなんてないから そんな屑篭…

天と地

若かりし頃 天にも地にも 神にも仏にも 見放されたことがあった 今はただ 生と死の間で なぜか生きながらえてる 奈落の底へ落ちる前に 蜘蛛の糸にしがみついている 生きることが 意識せずとも楽しかったのは いつのことだっただろうか 今まさに 気をつけなけ…

僕ではないぼく

二十歳の時に 僕はぼくを失った まるで御伽話のように 魂を抜かれてしまった それまで積み重ねてきたもの 培ってきたもの すべてを失った なぜ どうして 悪魔に魂を売り渡し 僕の魂をその悪魔に差し出した その女は頑なに口を噤む 僕は永遠にぼくを失い 女は…

透明なひと

「あなたは透明なひと」 そう言われたことがある もちろん褒め言葉と 受け止めている しかし 天邪鬼な僕は 「あなたって影が薄い」 そう言われてるのかな? 変な勘繰りをしてしまう たしかに僕は影が薄い 他者から僕は見えにくい いや あまり必要とされてい…