ああ、それを言われると・・・

おもえば

 

僕はこんなに長い間

一体なにをしていたのだろう

 

しっかり大地を足で踏みしめてこなかった

時のながれを指をくわえて眺めていただけだった

 

若き日に

病を得たその日から

 

時をワープして

時空をショートカットしてズルして生きてきた

 

それゆえに

 

姿は老いても

年甲斐もない、中身もない、

このわたしという生き物

 

いつもいつもそうだった

知らないことを、

知ってるかのように偽ってきた

 

いつもいつもそうだった

引き受けるべきことを

いいわけしながら逃れてきた

 

卑怯者は

智慧を得ない

 

得るべきもの

得たかったものが

 

実年齢とともに

遠く遠くなってゆく

 

ーーーーー

  

今宵も

飲み友達の年端も行かぬオネーサンが

一刻者(いっこもん)を飲み干して

私に説教を垂れる

 

「あなたはわかっていない」

 

彼女の言説が的を得ているがゆえに

自分の幼さを覚え、悔しさを噛みしめる

 

 

母へ

そして

今日の夕暮れは

雨とともに灰色の空が暗転してゆく

 

あなたの人生はもう残り少なく

何色で暮れてゆくのだろう

 

思えば

僕はずっとあなたに色を決められてきたように思う

 

これは甘えか

被害妄想か

 

しかし僕には自分の色を決める

術がなかった

 

そして気がつけば

僕は自分の人生を失いかけてた

 

今になって

僕は、あなたの愛情を渇望していたと認めることができる

 

今になってだ

 

長い間死んでいた僕は、どうやら自分を取り戻しつつあるようだ

 

もう僕は

あなたを憎んでもいないし、愛してもいない

 

そしてあなたは、生まれてからずっとそうであったように

その「頼る心、縋る心」で

 

 

ひとりで地獄へ落ちてください

 

 

言葉もない

どんなに自分に嫌悪を抱こうとも

どんなに自分が許せなくとも

どんなに自分に背を向けようとも

 

僕は自分を生きてゆく

誰がなんと言おうとも

 

かたわの僕を

人はあれこれ

誹謗する

 

好き勝手に

こき下ろす

 

まあ、言わせておこう

 

人間はくだらない

人生はくだらない

 

それでも僕は

そんな人間であり

人生を生きている

 

その事実から

逃れることはできない

 

くだらない人生を

明日もよろしく

 

 

かなしみ自慢

「わたしはひとより多くかなしみを知っている」

こんなことを言う人がいる

 

実際、その人は多くのかなしみを経験してきた

かもしれない

 

しかし、その経験の裏で知った

多くのよろこびについて、語ることはない

 

なぜ

よろこびよりも

かなしみを見せびらかすのか

 

かなしみを現すことで

だれかの気持ちを繋ぎとめようとしているのかな

 

よろこびを現しても

誰もあなたの元を去っては行きませんよ

 

きっと

 

 

陽は沈み、そしてまた朝は来る

毎日毎日

来る日も来る日も

 

朝起きて

かったるくて

 

「今日も頑張んなきゃ」

と自分を奮い立たせ

 

日々の生活の中で

人生がうまくいかないことに

遣る瀬無さを感じて

 

「こんな人生、やめちまいたい」

と思いながらも

 

それでも生きることを諦められずに

また明日も足りない勇気を振り絞って

日常の生活をこなしてゆくんだな。

 

生きるなんて当たり前ではないのに

当たり前のように今日も生きている。

 

人間って凄いね。

 

さあ、もう寝なきゃ

 

 

夢の正体

僕は、今日もまた

永遠に形になることのない夢を見る

 

夢は

形になれば、夢とは言わない

 

形にならないからこそ

夢なのだ

 

今日も

今も

 

夢という

逃げ水を追いかけて

 

生きるのがまた

虚しくなる

 

あなたの心に

僕はいない

 

誰の心にも

僕は存在しない

 

あなたは僕の「夢」なのか

きっとそうなのかもしれない

 

夢は

僕の生きる希望を挫く

 

 

 

 

風の声 ひとの心

強い風が

窓の隙間から唸り声を上げる

 

子供の頃

夜中に木々の間を通り抜ける

強い風の声が怖くて眠れなかった

 

今も

風の声を聞くたびに

あの頃を思い出す

 

でも

 

今、一番怖いのは

世のひとの心

 

かもしれない

 

いつからか

風より

ひとの心が怖くなった

 

嵐の風が

耳元で唸り声をあげる

 

ひとの心は

胸元でぼくの心を切り刻む

 

今夜もぼくは

恐怖におののき

頭から布団をかぶる